十二月九日(水)
少し、気が早いが、あと、もう、クリスマスまで2週間ほどとなった。恋人同士にとって、特別な日であることは言うまでもない。これまで、女性と二人きりと過ごすことなど一度もなかった。ユキエと二人で一生忘れない思い出を作りたい。だが、温泉旅行以来、ユキエは仕事が忙しくて、中々、会えない。今晩、やっとお互いの時間が取れ、クリスマス作戦会議を催すこととなった。「今晩は〜。」ユキエが部屋にやって来た。 「いらっしゃい。どうぞ。」 「お邪魔しまーす。今日、お兄さんは?」 「雀荘。」現役東大合格した兄は、大学に入学するや、遊び人と化してしまっていた。 「この部屋でやるんでしょ?先ず、ツリーがないとね。」 「そうだね。じゃ、こうしようか。俺が、この部屋をクリスマス風にコーディネートするから、ユキエは、お料理作ってくれない?」 「いいわよ。それじゃー、何、作ろうか?ケーキでしょ、先ずは。それから、スパゲッティ作ろうか。後は、チキンにサラダぐらいかな?ヒロキも、少しは手伝うのよ。」 「えっ、チキンって、あの丸ごとこんがり焼いたやつ?」 「ううん。もも肉だけだよ。」 「うん、すごくおいしそう。いいんじゃない。でも、俺の部屋、オーブンないよ。ユキエ、持ってる?ケーキだけ、作って来れない?」 「ああ、駄目。私、イヴの日、夕方まで仕事入っているの。それから、すぐ、ヒロキのうち来るでしょ。ケーキは、前の日に作り置き出来ないし。」 「う〜ん、困ったなあ。ケーキだけ、買っちゃう?」 「そんなの駄目よ!二人で作るから、意味があるんでしょ?」 「そうだね。ごめん。」 「それじゃ、オーブンレンジ、買おうか?」 「えっ、わざわざ、買うの?」 「ウチにも欲しかったし、丁度いいじゃない?」ピクニックの時といい、ユキエの行動力には、いつも、驚かされっ放しだ。 「それじゃ、今度、一緒に買いに行こうね。」 「分った。それまで、楽しみにしているね。」クリスマス・イヴまで、あと、2週間。
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