11月2日(月)
今日は、ダイコン踊りで有名な我が東京農大の学園祭の日である。ミニ動物園があったり、屋台が並び、見ているだけで、胸がウキウキしてくる。ユキエを誘って、やって来た。 先ず、全体的に見て歩き、正午を廻る頃、学科の"単位共同体"友達からもらった「餅焼き」チケットを使うことにした。ごった返す経路を掻き分けながら、やっと、屋台の前に到着した。そこには、面白い看板が立て掛けてあった。顔の部分が切り取られた宇宙人「グレイ」のペアだ。 「マジ、ウケル!ユキエ、これで、記念撮影しようぜ。」 「本当!変なの!」 「鶴ちゃん、シャッター押してくれない?」 「おお、来たか!いいぜ、カメラ貸しな。」素敵な思い出が、また、一つ増えた。 「小原は、どうした?」 「今、買出し行っている。もうすぐ、帰って来るぜ。」 「じゃ、チケット、ありがとう、って伝えといて。」 「オーケー。まあ、デート、楽しんでいってくれ。」 「おお、じゃあな。」アツアツの餅焼きを持って、落ち着ける場所を探す。最後にたどり着いたのは、学生食堂「すずしろ」の屋上。 「ここで、食べよっか。」 「人、多いよね〜。私、なんか疲れちゃった。」 「俺も。」 「ヒロキは、まだ、若いでしょ。泣き言言わないの!」 「はいよ。じゃ、早速、餅焼き食べようぜ。」 走好会の皆さんが作ってくれた餅焼きは、とても、おいしかった。 「おいしいね、ヒロキ。」ユキエに、また、笑顔が戻った。そこで、冗談のつもりで、 「はい、ユキエ、あ〜ん。」 楊枝で、餅焼きを一つ、ユキエの口元に持っていった。ユキエの小さなお口にピッタリ収まった。 「ほっ、ほっ、熱〜い。はい、今度はヒロキの番。あ〜んして。」 冷静に考えると、一体、なんてことをしているんだ。まるで、授乳されている赤ん坊のよう。これまで、貫き通してきた硬派は、どこ吹く風。ちょっと照れくさかったが、誰も見てはいないだろうと思いつつ、口を大きく広げて餅焼きが入るのを待った。 「はい、ヒロキクン、あ〜ん♪」ユキエも赤ん坊に離乳食を与えている気分にでも浸っているのだろうか。誰かに見られているかもしれない、そんな恥らいがあったが、母性本能むき出しのユキエに、ヒロキには抵抗する術はなかった。
|